交通事故の現場で車を動かしていい?弁護士が解説する法的リスクと正しい対処法

 2026-03-10    21  

交通事故を起こした直後、多くのドライバーが頭が真っ白になり、パニック状態に陥ります。その中で最も多く耳にする、そして最も重要な質問の一つが、「車を動かしていいのか?」というものです,結論から申し上げますと、「安全確認がとれるのであれば、車を動かすことは可能です。しかし、絶対にしてはいけないケースもあります。」

この判断は、後の保険請求や示談交渉、さらには刑事責任の問題に直結する非常に重要な判断基準となります,本記事では、交通事故専門の弁護士として、現場で車を動かすべきか否かの法的な判断基準と、具体的な対処法を詳しく解説します。

交通事故の現場で車を動かしていい?弁護士が解説する法的リスクと正しい対処法

法律上の基本原則:危険防止義務

まず、日本の法律である『道路交通法』に基づいた基本的な考え方を理解する必要があります,同法第72条には、事故を起こした場合、運転者は「危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」と規定されています。

これは、事故現場を放置すること自体が違法であるという意味ではありません。しかし、「事故を起こしたことによって新たな事故や怪我を引き起こさないようにするため」に、適切な措置をとる義務があるという意味です。したがって、「移動していいか」という問いは、単に「物理的に動けるか」という技術的な問題ではなく、「法的な義務を果たしているか」という問題となります。

車を動かしていいケースと動かしてはいけないケース

弁護士として接する多くの事件において、車の移動が適切でなかった場合、過失割合が不利的に変更されたり、保険会社から支払いを拒否されたりするケースが見受けられます,以下の基準で判断するのが一般的です。

【車を動かしていい場合】

  • 二次災害の防止が可能な場合: 信号待ちや追突で停車している場合、後続車が追突してさらに大惨事になるリスクがある場合など、移動することで交通の安全が確保できる場合。
  • 写真撮影や証拠保全のために必要な場合: 車の位置関係、周囲の状況、傷の程度などを確認するために一時的に移動する場合。ただし、必ず「安全な場所」に停めること。
  • 警察の指示がある場合: 警察官から「道路を開放してください」と指示された場合。

【車を動かしてはいけない場合】

  • 負傷者がいる場合: いかなる場合も、まずは負傷者の救護を最優先にします,負傷者がいる限り、車を動かすと負傷者が悪化したり、二次事故が起きたりするリスクが高まるため、現場を固定するのが原則です。
  • 車両の損傷が激しい場合: 車が破損して動かなくなっている場合、あるいはエンジンがかからない場合は、動かすことが物理的に不可能です。
  • 責任の所在が明確でない場合: どちらが悪いのか、はっきりしていない場合、現場の状況を変えることは証拠保全の観点からも推奨されません。

「移動」が「逃走」に該当するリスク

ここが最も注意が必要なポイントです。もし「安全な場所に移動した」と主張しつつも、警察の調査で「移動の必要性がなかった」と判断された場合、「交通事故を起こして逃走した」という罪(道路交通法第117条の2)に問われるリスクがあります。

また、万が一、移動した結果、後続車との二次事故を起こしてしまった場合、その責任は非常に重くなります,特に、警察が到着する前に移動した場合、警察官の事故現場検証(事故証明書作成時の確認)の結果とズレが生じ、過失割合が大幅に不利益になることもあります。

正しい対処法と証拠保全

交通事故の現場で、冷静に対処するためのステップをまとめます。

  1. 安全確保: 必ずハザードランプをつけ、安全な場所に車を停める。
  2. 負傷者確認: 誰か怪我をしていないか確認する,怪我人がいれば、救急車を呼ぶか、救護を施す。
  3. 現状確認と証拠保全: 交差点の場合は信号機の状態、角での事故なら視界の遮蔽状況などを記憶するか、スマホで撮影する。もし移動して撮影する場合は、必ず「事故車両の現在位置」と「元の位置」を撮影し、その間に移動したルートを示す写真も撮っておくと良いでしょう。
  4. 警察への連絡: 責任の争いになる可能性がある場合、あるいは人身事故の場合は、必ず警察を通報してください,警察が作成する「事故証明書」は後の示談や裁判において最も重要な証拠となります。
  5. 連絡先の交換: 相手の運転手と連絡先を交換し、相手の保険会社に連絡を入れる(相手が連絡してくるのを待つのが一般的です)。

交通事故の現場で車を動かしていいかどうかは、状況判断が求められます。しかし、多くのドライバーが「とりあえず動かしてしまった」という経験をされています。

弁護士としてのアドバイスをまとめます。「安全確保が第一である」ことを常に心に留めてください。もし迷ったら、とりあえず車を動かさず、ハザードランプをつけて待機するのが最も安全な判断です,後になって「なぜ動かしたのか」という説明が難しくなることはありませんが、「なぜ動かさなかったのか」という説明は、事故証明書の記載内容によって自動的に決まってしまうことが多いからです。

事故は起こりうるものです。しかし、正しい知識と冷静な判断によって、後のトラブルを最小限に抑えることができます。もし不安な点がある場合は、専門の弁護士に一度相談することをお勧めします。

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